特派員の目:WAGYUブームの米国で「和牛」に立ちはだかる壁=金寿英

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牛肉大国の米国で近年、和牛の認知度が高まっている。高級レストランのステーキからハンバーガー、サンドイッチの具材、小売店の陳列棚など至る所で「WAGYU」を見かけるようになった。ただしこれらの大半は米国産またはオーストラリア産だ。 和牛は日本国内で生まれ育った黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4種類及びその交雑種と規定されている。ところが和牛の遺伝資源管理が強化される前の1970~90年代に種牛などが合法的に輸出され、それに由来する牛がアンガス種などとの交配でWAGYUとして発展した。米国でも上質な牛肉として好まれ、業界団体は2025年に米農務省と連携して「正真正銘」の米国産WAGYUを認証する制度を設けるなどブランド保護の取り組みも進めている。 その一方で最高級の霜降りである「A5」の和牛を渇望する米国民は多い。日本政府によると、牛肉の対米輸出は21年に前年比2倍強の1178トンに増え、その後も同水準を維持している。日本食肉格付協会の大野高志会長は「サシがたっぷり入った和牛の口溶け感は格別だ」と品質の違いを指摘する。 ただ、米国で和牛振興に取り組むフィリップ・セング氏によると、米国の牛肉輸入総量に占める和牛の割合は1%にも満たない。輸入拡大を阻む最大の要因として挙げられるのが関税だ。20年発効の日米貿易協定では日本も数カ国に割り当てられていた低関税輸入枠を利用できるようになった。だが同年に対米輸出制限を解除されたブラジル産が急増し、昨年と今年は1月で枠の上限に達した。枠を使い切った後は26・4%の高関税が課されることになり、和牛消費拡大の足かせになっているという。 日本国内で少子化に伴う国内市場の縮小や生産コストの増大で生産者が苦境にあえぐ中、日本政府は和牛の輸出拡大を目指している。セング氏は、日本が米国産の牛肉や穀物飼料を大量に輸入していると指摘し、「公平で相互的な牛肉の貿易は米国にとっても恩恵が大きい」と力説する。対米交渉では高関税措置を振りかざすトランプ政権に日本政府は防戦を強いられがちだが、和牛の対米輸出拡大に向けた官民の粘り強い働きかけに期待したい。【ワシントン金寿英】

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