ナウマンゾウの歴史が塗りかわる? 旧石器人とのかかわりと絶滅の謎
かつて日本列島にいたゾウ、ナウマンゾウ。東京都心部をはじめ全国各地で化石が見つかっていて、身近な古代の動物といえる。人がゾウの狩りをしていた姿が頭に浮かぶ人もいるかもしれない。 しかし、以前の「常識」は塗り替わりつつある。最近も、ナウマンゾウの絶滅時期はこれまでの説より古く、狩猟で消えたとは考えにくいのでは、とする論文が発表された。 ナウマンゾウは北海道から沖縄まで、あちこちで化石が見つかっている。30万年以上前から日本にいて、針葉樹と広葉樹の交ざる冷温帯の森林を好んでいたらしい。名前は、明治時代に来日したドイツ人地質学者、エドムント・ナウマン博士に由来する。 この化石の年代を精密に測定した論文が5月、科学誌サイエンティフィックリポーツに掲載された(https://doi.org/10.1038/s41598-026-50310-x)。東海大の日下宗一郎准教授(自然人類学)らの研究で、「2万4千年前」と推定されてきた絶滅時期が、「3万3千~3万5千年前」になるとの内容だった。1万年もさかのぼることになる。 現生人類(=ホモサピエンス)が日本列島にたどり着いたのは3万8千年前ごろと考えられている。人とナウマンゾウの両方がいた期間は、数千年ほどに大きく縮まる。 日下さんらのグループは、人口の変遷や石器の種類も検討。狩猟が絶滅につながったというよりも、気候変動で生息環境が変化した影響が大きかったのではないかと指摘した。 「人が狩猟していたイメージがあるが、ナウマンゾウと人の重なりは少なく、実際に狩猟していたことを示す明確な証拠も見つかっていない。それならば気候変動で減っていったと解釈するのが自然」と日下さんは話す。 ナウマンゾウの年代は、骨や歯に含まれるコラーゲンの放射性炭素を測ったものが多かった。しかし、従来の方法では古いものほど若返る可能性があることがわかってきた。まわりから混ざった新しい炭素を取り切れないためだ。 そこで、コラーゲンの大きな分子だけを濾過(ろか)して取り出す方法で再測定した。各地で保管されている化石と、愛媛県今治市付近の瀬戸内海で見つかった化石の計12点を測ると、濾過(ろか)したほうが数千年ほど古くなった。 最新の化石で3万6千年前ごろ。最終的に、信頼できる16点のデータから統計的に求まった絶滅時期が「3万3千~3万5千年前」だ。 さらに、100カ所の遺跡から出土した木炭494点のデータを使い、地域別の人口密度の変遷も求めた。すると、ナウマンゾウがいた時期の東北地方や中国地方は人が少ないなど、人の活動域とナウマンゾウの生息域は必ずしも重ならなかった。 このころ主流だった「台形様石器」などは大型動物の狩猟には向かず、ゾウをやりで倒すのに使える石器が広がったのは絶滅後という。 今回の研究のきっかけは、瀬戸内海で見つかったナウマンゾウ化石だった。すぐ近くの伯方島(今治市)に2万~3万年前の遺跡があった。
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