キャンパる:有給休暇「知らない」「取れない」 学生アルバイトの実態

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正社員でなくても、一定の条件を満たせば年次有給休暇は働き手に与えられる。労働基準法で定められた当然の権利だ。しかし、いま多くのアルバイト学生がその権利を知らされないまま、あるいは職場の空気に押されて、もらえるはずの有休や有休分の賃金を、時効や退職を機に失っている。なぜこうした事態が起きるのか、当事者である学生たちの声と、専門家や所管官庁への取材から探った。【上智大・清水春喜(キャンパる編集部)】 キャンパる編集部がアルバイト経験のある学生を対象に実施したアンケート(有効回答123人)によると、有休取得の要件を満たしている人のうち、「有休を取得したことがない」と回答した人は約6割にのぼる。 「僕の彼女が自営業の飲食店で働いています。『うちには有休はない』と言われたそうですが、そんなことあるんですか?」「有休は社会人のみのものだと思っていた」――。アンケートの自由記述欄には、こんな戸惑いの声が寄せられた。 労働基準法上、雇用形態に関わらず「雇い入れ日から6カ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤」すれば有休は付与される。有休がない職場は法律上存在しない。だがアンケートでは「働き始める前から有休の存在を知らなかった」という学生が6割近くを占め、有給取得の要件を満たしながら未取得となっている理由も「有休があることを知らなかったから」が5割と最も多かった。 アルバイトが有休を取得した際の賃金は多くの場合、過去3カ月間の平均的な1日の賃金を基に計算される。例えば週3日、時給1100円で1日5時間働く学生の場合、有休1日分の賃金は単純計算で5500円だ。週3日働く場合は、半年で5日分の有休が発生する。5日休んでも有休扱いなら2万7500円分の賃金を得る権利があるということだ。 しかし、有休を2年間未取得でいると時効で消滅してしまう。千葉県内の塾で講師として3年以上働いてきた学生は既に過去に付与されていた有休の一部が失われていることに気づいた。「時効を迎える前に通知してほしかった」と怒りを隠さない。 なぜ学生の有休取得は進まないのか。背景にあるのは、学生の知識不足とそれを助長する企業の不適切な対応だ。アンケートでは、アルバイト契約の際に賃金などを記した「労働条件通知書」を交付されたと答えた学生は7割超に上った。書面の交付は労働基準法で義務付けられており、企業側もコンプライアンス上、守るケースが多い。しかしアンケートで「有休について十分な説明があったか」と尋ねたところ、5割近くが「全く説明されなかった」と回答した。 学生の側に知識があり、有休取得を申し出たとしても、雇い主が取得させないこともある。労働問題に詳しく、ブラックバイト問題対策の活動にも尽力してきた嶋崎量(しまさきちから)弁護士(日本労働弁護団常任幹事)は、「社会経験が乏しく未成熟な学生は、使用者である大人から『え、有休取るの?』と圧力をかけられただけで萎縮してしまう。悪質な企業はさらに、立場の弱い学生の足元をみて、『うちには有休がない』とうそをつく」と指摘する。 雇い主が露骨な圧力をかけたりうそをついたりしなくても、取得は難しいと考える学生も多い。アンケートで未取得の理由を尋ねた設問で、2番目に多かったのは「職場の雰囲気が原因で言い出せない(3割)」だった。ある学生はアンケートの自由記述でこう回答した。「勤怠管理の画面で有休取得が必要と記載されていたが、消化せず辞めた。退職することで迷惑をかける後ろめたさがあり、言い出せなかった」 また飲食店で働く別の学生は「店長に有休を申請したら面倒なやつとして扱われるのは確実。店長自身も有休が権利として存在することを知らないと思う」と明かす。また、「もっと周知されれば言いやすくなるのでは」とも答えた。 有休の権利を主張すれば「空気が読めないやつ」と無形の圧力がかかる。勤怠管理システムで有休の日数が見えるようになってもなお、学生の心を縛り付ける同調圧力の問題は解決されていない。 厚労省はブラックバイト問題の表面化を受け、2015年以降、多くの新入生がアルバイトを始める毎年4〜7月にかけて「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを実施。大学へのリーフレット配布やX(ツイッター)、フェイスブックなどの公式アカウントで周知を図ってきたとする。また、学生のみならず雇用者側にも啓発を行っていると説明した。 10年以上キャンペーンを続けても、学生層に浸透しているとは言いがたい現状について、担当者は「学生の周りにはさまざまな情報があふれている。効果的にアプローチすることは難しい状況だが、SNSなども使い、分かりやすい形で周知できるよう引き続き取り組んでいきたい」と述べるにとどまった。 だが、学生たちは相談窓口に駆け込む以前に、有休の存在を知らない人が多く、知っていても職場の同調圧力で身動きが取れなくなっている実態がある。 嶋崎弁護士は厚労省の取り組みの偏りを指摘する。「厚労省の啓発はどうしても学生側に向きがちだが、本来必要なのは、使用者側への啓発だ。目先の人件費を安く抑えるのではなく、労働法をきちんと守ることが、将来的に長い目で見て持続的な会社の発展にプラスになるのだと理解させる必要がある」 一方で、学生の誰もが自らの権利を堂々と主張し、実際に行使できるようになるには何が必要か。嶋崎弁護士ら全国の弁護士で構成され、労働者や労働組合の権利を守る活動をしてきた日本労働弁護団が中心となって13年ごろから訴えてきたのが、学校教育の段階から働くルールと権利を学ぶことを義務付ける基本法「ワークルール教育推進法」の制定だ。 基本法を定めることで、労働問題の所管担当である厚労省単独でなく、文部科学省など他省庁も巻き込んで教育を徹底する狙いがある。嶋崎弁護士は「地に足のついた取り組みが必要。その土台として基本法を作ることは大きな意味がある」と法整備の意義を訴える。 記者も高校卒業を機にアルバイトを始めたが、それまで学校で有休の存在について教わった記憶はない。アンケート結果でも示された「有休の存在を知らない」という知識不足の背景には、教育が不十分なことがあるのかもしれない。アンケートの自由記述では、自分から学ばなかっ

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